あん摩マッサージ指圧治療院、鍼灸院、接骨院、
整骨院・・・保険が使えるの??
こんにちは、なりひら治療院の鈴木です。
下書きしつつも長らく眠らせてしまっていた記事を世に出したいと思います。
昨年末、健康保険療養費を取扱う為に必要な”施術管理者研修”というものを受講しました。
接骨院や整骨院ではよく“保険取扱”という看板を見かけると思います。
今回はこの”保険取扱”についてお伝えしていきます。
昨今問題になっております、膨張し続ける社会保障費・国民医療費にも関連する話ですので、将来の日本を憂う方達にはぜひ読んで頂きたいと思います。
1、健康保険制度のおさらい
皆さんご存知の「健康保険」。
毎月お給料から引き落とされていたり、区役所から支払通知が届いたりして、
「毎月毎月、なんでこんなに高いんだ!!(*`ω´)」
と激オコな方も多いでしょう。結構ひびくんですよねぇアレ。
日本では憲法25条に基づいて社会保障制度を整備し、「健康で文化的な最低限度の生活」を
政府が補償することになっています。
この社会保障制度の中に、社会保険が規定されています。
社会保険の中身も3つに分かれます。
①年金 ②医療 ③介護
です。
そう、お気づきでしょう。
20歳になった途端に支払義務の発生する国民年金保険料と健康保険料です。
そして40歳になったら払うことになる介護保険料です。
きっと中学校くらいでサラッと習ったのかもしれないけど、
将来的なマネーリテラシーとかファイナンシャルプランの構築の為にはもう少し深掘りして
「お前ら!将来、義務的に毎月支払うお金が月々4〜5万発生するからな!
仕事とかお金の使い方とかちゃんと考えろよ!!最悪、捕まるぞ!!」
って言っておいてほしかった。。。(;∀;)
多分何も考えなかっただろうけど。。。笑
とまぁ、この社会保険の中の②医療 の部分を「健康保険」と言ったり「公的医療保険」と言ったりするわけです。
①医療保険制度について
日本の公的医療保険は下のスライドのような特徴があります。
「なんでみんな入らなきゃいけねぇんだ!!」と言う人もいますが、
保険っていうのはそもそも「万が一の備え」ですので、そんな「万が一」は起こらないに
越した事はないですし、万が一が起こってしまった時に「やっぱり入っててよかったねぇ(´ ▽ `)」
となるのが保険なんです。そういうものです。
この『国民皆保険制度』によって、産まれたての赤ちゃんから100歳を超えるお年寄りまで、
全ての人が安くて高度な医療を受ける事ができるのです。
この制度によって、日本全体の公衆衛生が向上し、多くの人が長く健康に生きることができます。
日本が世界に誇る制度だと思います。
「べらんメェ!病気や怪我が恐くて生きていけるか!病気になった時はなった時でぃ!!
宵越しの金は持たんのや!!保険よりも今、金を使うんでぃ!!」
っていう価値観の方もいるでしょうけどもね。
で、大事なのが
2)現物給付制度
です。
②現物給付制度とは
普段、皆さんが病院にかかった時に何気なく保険証を提示し、何気なく診察を受け、何気なく3割負担(1〜2割負担の方もいます)で数百円から多くても数千円を会計で支払って、何気なく処方箋をもらって、何気なく隣の薬局でお薬をもらって(購入して)帰ると思います。
これこそが現物給付そのものです。
例えば、〇〇生命保険などの民間保険会社の場合、
「手術を受けたら30万円支払います」とか
「入院したら1日1万円支払います」と言った商品が多いです。
これは受けた医療行為に対して現金を受け取る『現金給付』と言います。
対して、現物給付は
「本来は1万円の診察・治療代だけども公的医療保険に入っているから、
あなたの負担は3千円でいいよ!!」
「本当は薬代が1,000円だけども、健康保険入ってるから300円でいいよ!」
というのが現物給付です。
医療行為をお安く提供してもらえるのが現物給付ということになります。
公的医療保険はこの現物給付が基本となっています。
②ー1、現物給付してくれる場所はどこ??
7割引で医療行為を買えてしまう公的医療保険ですが、実は医療を受けられる場所が限られています。
それが“保険医療機関”です。
保険医療機関の定義は下記の通りです。
厚生労働大臣の指定を受けた病院若しくは診療所(第六十五条の規定により病床の全部又は一部を除いて指定を受けたときは、その除外された病床を除く。以下「保険医療機関」という。)又は薬局(以下「保険薬局」という。)
e-GOV 法令検索 健康保険法(大正十一年法律第七十号) 第六十三条第三項第一号より
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=211AC0000000070_20210101_502AC0000000008&keyword=%E5%81%A5%E5%BA%B7%E4%BF%9D%E9%99%BA%E6%B3%95
とまぁ、条文とは読みづらいもので、かいつまんで言うと、
「厚生労働大臣からお墨付きをもらった病院か薬局」
ということになります。
大抵のクリニックや病院、薬局が該当するかと思います。
大事なことなので改めて言います。
公的医療保険を利用して、医療の現物給付が受けられるのは指定された病院か薬局しかありません。
勘の良いみなさんならお気付きのことでしょう。
接骨院や整骨院、当院のような鍼灸マッサージ治療院では3割負担による現物給付の医療は受ける事ができないのです。
2、鍼灸マッサージ指圧院・接骨院・整骨院で
使える公的医療保険制度ってなに??
となると、気になるのは鍼灸マッサージ治療院や接骨院・整骨院で
たまに?頻繁に??聞かれる、「保険証出して頂けますかぁ??」というアレ。
おや??
保険証提示して、公的医療保険によって現物給付が受けられるのは
厚労大臣指定の病院(クリニック)か薬局だけって法律に定められてますやんか!?
どういうことですのん??
という疑問になりますよね。
①正式には”療養費”
前述の通り、公的医療保険の原則は”現物給付”。
医療行為の実施というサービスが支給されることになります。
しかし”現物給付”として受けとることのできない人・場所・機会・サービスが存在します。
そこを補完するのが“療養費”です。
療養費はその名の通り、「療養に要した費用」です。
被保険者は下記の場合、療養費として現金の給付を受ける事ができます。
<療養費として支給される場合>
①無医村等で保険医療機関がない、又は利用できない場合
②治療用装具
③柔道整復師による施術
④あはき師(あん摩マッサージ指圧師/はり師/きゅう師)による施術
⑤生血液の輸血を受けた時
⑥移送費
⑦その他
具体例については下記のページを参照して頂くとわかりやすいです。
【全国健康保険協会 協会けんぽホームページ】
https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g3/cat320/sb3170/sbb31705/1957-256/
確かに我々、あはき師・柔道整復師の施術も療養費支給の対象になっていますね。
ですが、いくつか注意して療養費制度を利用しなければなりません。
下記のような要件があります。
①療養費支給には<対象となる疾患・症状>があること
②医師の同意(=同意書)が必要であること
③保険者(保険組合など)が「やむを得ない」として認めた場合であること
です。
そして、原則は被保険者(お金を払う人)がまずは自分で立て替えて、後から給付を受ける事となっているのです。※この方法を「償還払い(しょうかんばらい)」と言います。
鍼灸マッサージ治療院や接骨院・整骨院で公的医療保険療養費を利用する為には
いくつかの条件があるので、何でもかんでも保険証を出して施術を受けるわけにはいかないのです。
ましてや施術所側から「保険証見せて下さい」などと言うことは本来あり得ないことです。
②じゃあ、どんな疾患・症状だったら
療養費が使えるのよ???
ちょっと堅苦しい文章になってきましたね。
これはいけません。肩の力を抜いていきましょう。
肩に力が入りっぱなしだと首から肩が凝ってきますからね。。。
ん??肩こり???
そういえば、「腰が痛い・肩が凝りすぎてしんどい」って接骨院とか行った事がある方いませんか??
受付で「保険証見せてもらえますかー??」って聞かれた覚えのある方いませんか???
ではここで、
「こんな疾患・症状なら、あん摩マッサージ指圧師・はり師・きゅう師・柔道整復師の施術に療養費が使えるよ!!」
という一覧を見てみましょう。
ちょっと文字だらけでわかりづらいですね。
ざっくり言うと、
①あん摩マッサージ指圧師の施術を療養費扱いで受けるには
「脳卒中の後遺症や脊髄損傷などよる麻痺を緩和させる為」
「どんな病名がついててもいいけど、拘縮しちゃって動きの悪くなった関節を動かせるようにしたり、萎縮によって弱まった筋肉を強くさせる為のマッサージ」
「これは本当にマッサージ必要だよね!という場合の神経痛」
が対象になります。
②はり師・きゅう師は表記の通り。
③柔道整復師はこの単語がキモです。
“急性・亜急性”
“外傷性”
つまり、「いきなりやらかした怪我」という事です。
うーん。①~③まで肩こり・腰痛という単語は入っていませんね。。。
はてさて、「保険証を提示して電気あててちょっと揉む」という行為に
療養費が支給されるべきなのかは双方の良心に少し問いかけてみる必要がありそうです。
③医師の同意が必要
あん摩マッサージ指圧・はり・きゅう施術で療養費を申請する場合、“医師の同意(同意書)”が必要です。
例外はありません。
こんな書式です。
このような書類を担当の保険医(保険医療機関のお医者様)に書いてもらう必要があります。
見たことある!!って人は少ないのではないかな。。。
この書類を病院の先生に書いてもらい、あん摩マッサージ指圧・鍼灸施術所(施術者)へ渡します。
④保険者の承認が必要
保険者とは、その保険サービスを運営する側のことです。
会社員であれば所属する会社の健康保険組合などが保険者ですし、
自営業者であれば市役所や区役所で手続きをする国民健康保険が保険者となります。
それに対して、保険サービスを受ける人たちを被保険者と言います。
保険者は保険料の納付を受け、被保険者は保険者からの保険給付を受けます。
あん摩マッサージ指圧師・はり師・きゅう師・柔道整復師の施術を受療し、健康保険による療養費支給を受ける場合は、加入する保険者へ申請し、受理されなければなりません。
保険者への申請方法も2通りあります。
1つは「患者さんが直接、保険者へ申請・請求する方法」
これはお会計の際に一旦全額をお支払い頂きます。その後ご自身で保険請求する事で7割分が戻ってきます。つまり3割負担になる訳です。
この方法を「償還払い(しょうかんばらい)」と言います。
もう1つは「患者さんの代わりに施術者が保険者へ申請・請求する方法」です。
この方法だと患者さんは施術を受けた際、施術料金の3割をお支払い頂きます。その後、施術者が代理で保険者に保険請求をし、施術者へ7割分の金額が戻るようになります。
この方法を「受領委任払い(じゅりょういにんばらい)」と言います。
どちらの方法で保険請求をするのかは保険者によって異なりますので、
ご加入の保険者にてご確認下さい。
やはりマジメな記事を書こうとすると、長くなるし細かくなってしまいます。
人間誰しも「簡単で・わかりやすくて・シンプルで・キャッチー」なものに惹かれますが、キチンとしようと思ったらそれなりに手間がかかるものなんですね(^ω^)
もう疲れたよ、パトラッシュ・・・
⑤療養費のまとめ
ここまで読んで下さった方々、大変お疲れさまでした。
30〜40分の講義と同じくらいのボリュームがあったと思いますが、公的保険による療養費制度の利用の仕方がお分かり頂けたでしょうか??
よく、「なりひら治療院さんでは保険は使えるの??」という質問を頂きます。
カンタンに答えてしまえば「YES」です。
ですが、病院や歯科医院のように保険証を提示すれば勝手に3割負担になるというものではありません。
前述のように、
①保険療養の適応疾患・症状であること
②医師の同意があること
③保険者の承認があること
この3つの要件を満たして初めて、
3割負担であん摩マッサージ指圧・鍼灸施術を受けることができます。
当院としては、同意書を持参した患者さんは療養費扱いとさせて頂きますし、
療養費利用が必要そうな方には、
「医師への依頼状(高診願)をお渡しして、病院での診察をオススメする」ことを
基本スタンスとしています。
3、最後に
厚生労働省によると、2010年の社会保障費は105兆円を超え、
2021年度予算はおよそ130兆円となっています。
そして、社会保障費の一部である国民医療費は2018年度に43兆円を超えています。
さらにその一部である、あん摩マッサージ指圧・はり・きゅう・柔道整復に関わる療養費は約4365億円(2019 年)。
個人的には「骨折・脱臼・打撲・捻挫・肉離れ等の急性、亜急性外傷」が保険療養費対象となる
柔道整復術がなぜ桁違いに療養費が多いのか、とても疑問ではありますが。。。
施術所の件数も多いですからね、きっと、そういった外傷の患者さんも多くいらっしゃるのでしょう。
決して、「腰痛や肩こり」などの慢性症状や不定愁訴に対して
療養費を利用しているなんて事はないでしょう(・∀・)
うんうん(・∇・)
療養費は適正に利用して、正しく、あん摩マッサージ指圧・鍼灸・柔道整復を受療し、
回復に向かうべきなのです。
当院でも療養費を利用した患者さんもいらっしゃいます。
経済的負担も抑えられ、尚且つ症状も緩和され、我々も患者さんも大変喜ばしいです。
問題は
「本来、療養費適用にはならない患者さんを利用して、施術所側が療養費の不正請求をしている」
事です。
患者さんは知らない間に不正の手伝いをし、その不正で施術者が潤っているのです。
我々が月々、数万円支払っている健康保険料がムダ遣いされているという事なのです。
膨張する社会保障費の中のほんの数%です。
しかし、こんなムダ遣いが少しでも減れば、毎年減っていけば、他の高度な医療サービスに
お金を回せるかもしれないし、月々の健康保険料にも反映されるかもしれない。
こんな専門的なことを一般の患者さんが知っていることはまずありません。
免許を持った我々、施術者側が適正な情報発信・啓蒙活動をし、
一般の皆さんが正しく療養費利用できるよう促していかなければならないのではないでしょうか。
少しでも将来の日本が、全ての人にとって、住みやすい国であることを願ってやみません。
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