関節リウマチ(RA)は多発性の関節炎を主症状とする原因不明の全身性疾患です。初めは手足の指や手首、膝などの痛みや腫れなどがみられます。次第に全身の関節が侵され、関節の変形や緩み、痛みが生じて機能障害をきたします。20~50歳台によくみられますが高齢で発症する場合もあり、女性は男性の約5倍罹りやすいです。
病因
RA(関節リウマチ)の病因はまだ解明されていませんが、遺伝的因子に環境因子が加わって発症するものだと考えられています。遺伝的因子には免疫の異常で自分自身の細胞を攻撃し、関節内の炎症を起こします。環境因子としては細菌やウイルスの感染が関与していると考えられています。
症状
関節症候
朝のこわばり、疼痛、腫脹、関節動揺性、関節可動域制限、関節の変形などがあります。手指の変形には尺側偏位(指が付け根の方から小指側に曲がる)、スワンネック変形(指先の関節から順に過屈曲、過伸展する)、ボタン穴変形(指先の関節から順に過伸展、過屈曲する)、オペラグラスハンド(関節の骨が解けて短くなり、引っ張ると伸び離すと縮む)。足趾の変形は外反母趾やハンマートゥ。膝関節の変形は内反変形のみならず、外反変形や屈曲拘縮を生じることが多いです。
関節外症候
発熱や目の症状、肘や手指などにできるリウマトイド結節(皮膚)、貧血や白血球減少(血液障害)、肺炎、浮腫、神経症状など全身の症状がみられます。また、シェーグレン症候群などの他の自己免疫疾患の合併も少なくありません。
検査
単純X線像(レントゲン)
早期の骨軟骨破壊の評価や進行の追跡が可能です。
CT
関節面の破壊を診断するためには、CTが有効です。
MRI
触診や単純X線像では診断の困難な滑膜、骨髄、関節軟骨、靭帯、腱などの抽出が可能です。
血液検査
RA(関節リウマチ)においては、診断の確定、疾患活動性の評価、治療効果の判定、副作用のモニターなどを目的として血液検査が定期的に行われます。
診断
関節リウマチの分類基準(アメリカリウマチ学会、1987年改訂)
7項目中、少なくとも4項目を満たす症例をRAとする。なお項目1から4までは少なくとも6週間持続していること。
項目 | 定義 |
1.朝のこわばり | 朝のこわばりは少なくとも1時間以上持続すること。 |
2.3関節領域以上の関節炎 | 少なくとも3つの関節領域で、軟部組織の腫脹または関節液の貯留を医師が確認すること。判定すべき関節領域は左右のPIP関節、MCP関節、手関節、肘関節、膝関節、足関節、MTP関節の14か所である。 |
3.手の関節炎 | 手関節、MCP関節またはPIP関節の、少なくとも1カ所の関節領域に腫脹があること。 |
4.対称性の関節炎 | 対称性に関節炎が同時に認められること。PIP、MCP、MTP関節領域では完全に左右対称でなくともよい。 |
5.リウマトイド結節 | 骨が突出した部分または関節周囲の伸側にみられる皮下結節を医師が確認すること。 |
6.血清リウマトイド因子 | いずれの方法でもよいが、正常対照群が5%以下の陽性率を示す方法で異常値を示すこと。 |
7.X線像の変化 | 手関節または指のX線前後像で関節リウマチに典型的な変化を示すこと。すなわち、関節もしくはその周囲にびらんまたは限局性の骨萎縮が認められること。(変形性関節症様の変化のみでは不十分)。 |
この分類基準はあくまでも臨床研究を行うために患者を均一化するための分類基準であって、診断基準ではありません。早期診断には向いていませんでしたが、2010年に米国・欧州リウマチ学会が合同で新しい分類基準を発表しました。
関節リウマチ分類基準(米国・欧州リウマチ学会合同、2010年)
(1)1 関節以上で明確な臨床的滑膜炎(腫脹)がみられる方
(2)滑膜炎をより妥当に説明する他の疾患が見られない方
項目 | スコア |
A.罹患関節 | |
・大関節1カ所 | 0 |
・大関節2~10カ所 | 1 |
・小関節1~3カ所(大関節の罹患の有無は問わない。) | 2 |
・小関節4~10ヶ所(大関節の罹患の有無は問わない。) | 3 |
・11ヶ所以上(1ヶ所の小関節を含む) | 5 |
B.血清学的検査(分類には1回以上の検査結果が必要) | |
・RF陰性かつACPA陰性 | 0 |
・RF低値陽性またはACPA低値陽性 | 2 |
・RF高値陽性またはACPA高値陽性 | 3 |
C.急性期反応物質(分類には1回以上の検査結果が必要) | |
・CRP正常かつESR正常 | 0 |
・CRP異常またはESR異常 | 1 |
D.症状の持続期間 | |
・6週未満 | 0 |
・6週以上 | 1 |
治療
薬物療法・手術療法・リハビリテーション・セルフケアの4本柱が基本となります。
薬物療法:非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)、副腎皮質ステロイド薬、疾患修飾的抗リウマチ薬(DMARDs)、生物学的製剤があります。
手術療法:滑膜切除術、切除関節形成術、関節固定術、人工関節置換術などがあります。
リハビリテーション:主に理学療法(運動療法と物理療法)、作業療法、装具療法があります。
セルフケア:生活習慣の改善と体調管理です。適度な運動や感染症・合併症の予防・早期発見など体を良い状態に保つことが大切です。
関節リウマチの治療は医学の発展により日々進歩を遂げていますが、原則一生つき合っていく病気です。進行を抑え、症状を改善するために、普段の生活の中で気をつけたり工夫したりすることも大切になります。
RAと鍼灸
RA(関節リウマチ)の患者さんは刺激に対する反応性が過敏になっています。そのため鍼灸治療は高度な技術と判断が求められます。一度に多くの刺激を与える治療は悪化の原因にもなります。毎日少しずつの治療が大事になってくるので、セルフケアとして灸療法が活用されます。
※リウマチは鍼灸治療の保険適応となる疾患です。
当院では、関節の炎症を抑えたり、疼痛緩和、筋緊張緩和などを目的とした治療を行っています。セルフケアのサポートも行っておりますので、お気軽にお問い合わせください。
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