あはきのお話

あはきは医業か医業類似行為かというおはなし Vol.2

あいも変わらずめちゃくちゃ久しぶりなブログです。
どうもみなさまこんにちは、なりひら治療院の鈴木です。
夏真っ盛りですね🍉
MacBookで「夏」って打つと一番最初に🍻の絵文字が出てくる僕のPC、優秀すぎませんか笑
って、すみません。今回は少し真面目なブログを書いてみようと思います。
みなさん、引き返すなら今のうちですよ・・・

あん摩マッサージ指圧師・はり師・きゅう師等に関する法律

去年からいくつか、「あん摩マッサージ指圧師・はり師・きゅう師等に関する法律(通称:あはき法)」をテーマにしたブログを書いていました。

あはきに関するお話のアーカイブページ
https://narihira-c.jp/category/aboutahaki/

鍼灸は医業か医業類似行為か
https://narihira-c.jp/ahaki1/

あん摩マッサージ指圧師と整体師のおはなし
https://narihira-c.jp/blog_220304/

などなど・・・
このあはき法は我々が職務上守らなければならない法律であるとともに、
この法律によって我々の身分や職域が守られてもいます。

先日、Twitter上であはき師界隈がにわかに盛り上がる投稿がありました。

記事本編はこちら

横浜医療専門学校学術顧問であり、過去に厚生教官などを歴任され、
あはき法解釈についての有識者でもある芦野純夫先生へのインタビュー記事でした。

インタビュアーは「ハリトヒト。(https://haritohito.jp/)」という鍼灸師向けのwebメディアさん。
業界向けのメディアさんなので一般の方々にとってはかなりマニアックな内容です😅
運営なさっている方々は有志でやってらっしゃるのでしょうか??
当院が運営しているコ・メディカとも重なる部分があるように思いますので、
その運営方法も気になる所です。

なりひら治療院開業に際して、私は
「あはき法や医師法、薬機法、景表法などコンプライアンスを遵守した治療院にしよう」
と思って治療院の運営をしてきました。
なので、改めて関係法規を見直す内に、芦野先生のことを知り、その著書を何冊か読んできました。

もしかして、僕はあはき法オタクなんじゃないかと思う時もあります・・・


「1条の免許行為者であっても行えるのは免許範囲の業だけであり、
それを逸脱して医業類似行為まで業としてはならないということです。」

それはまぁまぁ、置いておいて、、、
以前から写真の2冊を読んでおりましたので
・医業類似行為の定義
・あはきは医業
・指圧は手技療法の総称
ということは当院のブログにも書いております。
※そもそもあはき法第十二条で何人も医業類似行為を業とすることは禁止されており、
免許を持たない温熱・光線・電気・刺激・手技療法は医業類似行為である為、
「あん摩マッサージ指圧ではないから認められる」という主張は成り立たないと思われるんですよね。。。

第十二条 何人も、第一条に掲げるものを除く外、医業類似行為を業としてはならない。ただし、柔道整復を業とする場合については、柔道整復師法(昭和四十五年法律第十九号)の定めるところによる。

昭和二十二年法律第二百十七号
あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=322AC0000000217_20160401_426AC0000000069

医業類似行為とは疾病の治療又は保健の目的でする行為であって、医師、歯科医師、あん摩師、はり師、きゅう師、又は柔道整復師等の、法令で正式にその資格を認められた者がその業務としてする行為でないもの

昭和29年6月仙台高裁

1 この判決は医業類似行為業、すなわち、手技、温熱、電気、光線、刺激等の療術行為業について判事した者であって、あん摩、はり、きゅう及び柔道整復の業に関しては判断していないものであるから、あん摩、はり、きゅう及び柔道整復を無免許で業として行えば、その事実をもってあん摩師等法第一条及び第十四条第一号の規定により処罰の対象となるものであると解されること。

いわゆる無届医業類似行為業に関する最高裁判所の判決について
昭和三五年三月三〇日
医発第二四七号の一
各都道府県知事あて厚生省医務局長通知
https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00ta1075&dataType=1&pageNo=1

残ってるんですねぇ、昭和35年の厚生省医務局長通知も。
こういう記録を保管しておくのも、その時は必要性がわからなくても後々に必要になってくるのですね。


今回の記事で私が特に関心を持ったのは
・厚生省の通達が正しい法解釈に基づくものとは限らない

厚生省官僚たちもあはき法のスペシャリストではない為、誤解した解釈に基づいて通達を発出する事がある。

・某元厚生大臣による指示で無免許は取り締まりができない

あはき法19条が憲法22条(職業選択の自由)を侵害している恐れがあり、カイロプラクターたちに訴えられる可能性がある為と言われるそうです。しかしながら、職業選択の自由は「何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する。」となっており、「公共の福祉に反しない限り」という条件付きです。無免許で医業の一部である指圧業をおこなっていることは、他者の健康を害する畏れのある「公共の福祉に反する」行為なのではないでしょうか。
実際に昭和35年の最高裁判決においても、医業類似行為に対する禁止処罰は公共の福祉上必要である為、憲法第22条(職業選択の自由)に反するものではないと判決されています。

判決要旨
一 あん摩師、はり師、きゆう師及び柔道整復師法第一二条、第一四条が医業類似行為を業とすることを禁止処罰するのは、人の健康に害を及ぼす虞のある業務行為に限局する趣旨と解しなければならない。

二 右のような禁止処罰は公共の福祉上必要であるから前記第一二条、第一四条は憲法第二二条に反するものではない。

最高裁判例集
https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=51354

・「それは1条の免許行為者であっても行えるのは免許範囲の業だけであり、それを逸脱して医業類似行為まで業としてはならないということです」

第一条 医師以外の者で、あん摩、マツサージ若しくは指圧、はり又はきゆうを業としようとする者は、それぞれ、あん摩マツサージ指圧師免許、はり師免許又はきゆう師免許(以下免許という。)を受けなければならない。

あん摩マッサージ指圧師・はり師・きゅう師等に関する法律
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=322AC0000000217_20160401_426AC0000000069


我々免許者は医業の一部として、あん摩マッサージ指圧・はり・きゅう・柔道整復術を業とすることができます。しかしながら当然、医師しかできない医行為である診断や手術・投薬はできません。
私はあん摩マッサージ指圧師免許を持っていますが、はり師・きゅう師免許を持っていないので鍼灸治療はできません。逆も然りで、はり師・きゅう師免許しか持っていない人は指圧はできないし、骨折・脱臼後の整復はできません。柔道整復師しか持っていない人も指圧や鍼灸をすることはできません。
持っていないはずの免許行為をしてしまったら、「無免許施術」になるのです。
昨今、「医療系国家資格保有!!」という謳い文句の整体院などをよく見かけますが、芦野先生の仰る通り、「行えるのは免許範囲の業だけ」なのです。

目的と本分を見失わないように

無免許問題が話題になりますが、
私個人としては問題点は「医療系国家資格として免許行為者が、その保有する免許範囲を超えて業となしている(免許業務の越権行為)」「利用者側が自分の目的に適した施術を受ける為の情報やアクセス手段がない(医療リテラシーの向上)」ということだと思っています。

リラクゼーションやエステ、街中の揉みほぐし屋さん、カイロプラクティックなどの療術業、本当にたくさんの業態があり、全てが全て免許を持っているわけではありません。
厳密に言ってしまえば、無免許の医業類似行為として禁止処分の対象になる所もあるかもしれません。
かといって、現実的に言って全てを取り締まることはできないでしょう。
(もちろん本音で言えば、きちんと免許を取って欲しいとも思いますが・・・)

リラクゼーションは慰安が目的でいいし、エステは美容が目的でいいと思います。
上記、最高裁判決も「医業類似行為を禁止処罰とするのは、人の健康に害を及ぼす虞のある業務行為に限局する趣旨と解しなければならない」と述べております。

ただ、免許を持っていない人が「疾病治療や保健を目的に施術をすること」はいかがなものかと思います。
それは自分達の範疇を超えているのではなかろうかと。
最高裁判決は本当に無免許の指圧手技療法の営業権を担保する根拠になり得るのだろうかと疑問です。
(不文法である判例が、成文法以上の法的拘束力があるかどうかは法律素人の私にはわからないので・・・)

もしかしたら本当に重篤な疾患が隠れていたり、小さな兆候があるかもしれません。
そんな時に医師を始め、適切な医療機関に連携できるでしょうか?
患者さんは「僕は定期的にリラクゼーションに行っていて、楽になるんだよ」
と言って受診を控えるかもしれません。
「美容と健康は一体だから、病院での定期検診なんてしてないわ」なんて言うかもしれません。
「カイロに行って、『あなたは〇〇だから』と断定された」なんていう医師法・あはき法違反な話も耳にします。
それは公共の福祉には反しない行為なのでしょうか。

癒しを求めてリラクゼーションサロンに行くのはダメなことじゃありません。
綺麗になりたいからエステに行くのもいいんです。
ただ、術者側は業務範囲以上のことはしてはならないし、患者さん側も必要な時に必要な医療行為を受けられるような知識とアクセスは持っていて欲しいなぁと思ってしまいます。
お互いに目的と本分をきちんと見定めておくことが必要かと思います。

それ以上に問題だと思うのはやはり免許者が医業類似行為をしてしまっている事。

  1. 医業類似行為とは【電気・温熱・光線・手技・刺激を用いた、疾病の治療又は保健を目的とした行為であり、医師・歯科医師・あん摩マッサージ指圧師・はり師・きゅう師・柔道整復師など法で認められた者がその業務としてする行為でないもの】である
  2. あん摩・マッサージ以外の手技療法を総称して指圧業
  3. あはき法第一条より、医師以外のものは指圧を業とする際はあん摩マッサージ指圧師免許を受けなければならない

つまり、いくら医療系国家資格を有していたとしても、あん摩マッサージ指圧師免許がない限りは手技療法(指圧)を業として行ってはならないのです。
それぞれの免許でできることが定められているのだから、免許に則した業務を執行するべきだし、範疇外の医療行為をしたければ当該免許を取得しにいけばいいのです。

加えて、整骨院に行ったら「〇〇症です。回数通わないとダメです。保険使いますか?回数券買いますか?」なんて、医師法・あはき法違反及び詐欺罪みたいな話もあります。

何がいけないって、キチンと医業の一部として患者さんを診て、必要なら外部の医療機関を紹介・推奨して、他業種連携で一人一人の患者さんに適した治療を受けてもらうように促すべき立場の免許者が「全部ウチで解決できますよ!/解決させますよ!」という顔して患者さんを囲い込んでしまうヤカラがいることでしょう。

運転免許がない人が車を運転しても問題ありませんか?
普通自動車免許しかない人が大型バスを運転して、人を乗せて仕事をすることが認められますか?
タクシー運転手を始めようと思ったら普通自動車免許第二種を取得しなければならないし、運転する車種によって取るべき免許も異なります。

道路交通法だけが厳しいのではありません。
医業も同様なのです。

あん摩マッサージ指圧師・はり師・きゅう師・柔道整復師を始め、他にも多くの医療系国家資格があります。

昨年投稿した、施術所でよく見かける
医療系国家資格についてのブログ
https://narihira-c.jp/blog_211217/

全部で22個ある厚生労働省管轄の医療系国家資格ですが、これほどまでに細分化されているということは、やはり人体が安易なものではなく、人の病気・怪我の治療や健康の維持・増進に関与する為には、それぞれの専門知識と技術を以ってして包括的・複合的に診ていく必要があることの裏返しなのではないかと思えます。
だからこそ、隣接職種との連携が必要になります。
(参考:厚生労働省管轄の国家資格はこちら https://www.mhlw.go.jp/kouseiroudoushou/shikaku_shiken/index.html)

「自分は全ての人を救う治療家になるんだ!!」
それはそれは立派な心掛けです。
私も常々そうなりたいと思っているし、そのつもりで患者さんに向き合っていますが、現実はそんなに簡単でありません。自分のできる事は限られているし、全てを自分一人でまかなう事は不可能です。だからこそ周りと連携するのです。
私の場合、目的は「一人でも多くの人に楽になって欲しい」ですが、本分は「あん摩マッサージ指圧業」ですので理念は「あん摩マッサージ指圧術を通じて、一人でも多くの人に楽になって欲しい」ということになります。
もしかしたら今後、もっと多くの人を救いたいと思い、他の免許を取得しに行くかもしれません。
利益ばかりを追求するのではなく、目的と本分をしっかりとわきまえながら業務に取り組みたいと思っています。

多くの人に、正しい”あはき”を最短ルートで利用してもらいたい

別に「無免許を潰そう!!」とか思っている訳じゃありません。
でも不法・悪質な医業類似行為者が野放しにされ続けていていいとも思っていません。
我々の職域を守ることも重要ですが、それ以上に患者さんが正しい”あはき”を正しく受療する機会が失われることが残念でなりません。
世間にはこの道何十年といった大ベテランの凄腕あはき師がゴマンといらっしゃいます。
そういった方々は、妙な人集めの広告をするでもなく、地道に毎日目の前の患者さんと向き合い、必要であればしっかりと病院・クリニックといった医療機関へ送ります。
真っ当なことを真っ当にやり続けている人は往々にして、見つけづらいところにいらっしゃいます。
だから、真っ当な”あはき師”による真っ当な”あはき施術”を最短ルートで見つけてもらいたい。
そう思って当院では
「現役あはき師によるプロフェッショナルなあはき師の検索サイト コ・メディカ」
を運営し始めました。

あはき法が出来て以来およそ70年。
たくさんの人たちがこの業界に従事し、歴史と伝統、社会的基盤を作ってきて下さいました。
その裏でこちらもまた多くの人が歴史を曲解し、解釈を歪ませてきたとも言えます。
その結果、事件・事故となり、患者やその家族が犠牲になることもありました。
「あはきは医業か医業類似行為か」の答えは明確にしておくことは、施術者自らの行動理念に映し出されるのではないでしょうか。
医業という人の命に関わる仕事の一部である以上、最大限の注意を払い、最大限に集中して、最大限に真摯に向き合わねばならないはずです。
私はそんな風に自分の仕事に責任と誇りを持つ先生方をコ・メディカでご紹介していきたいと考えています。

自らのルーツを知ることは、これからの在り方を選ぶ基準にもなる

確かにあはき法は古い法律です。
治療院の経営上、「広告規制の範囲が厳しすぎる」と思うところもありますし、改正してほしい部分もあります。
ですが、仮に法改正や憲法改正がされるという状況になった時、我々あはき師自身がそもそもの定義や成り立ち、これまでの歴史と経緯を知っておくことは法改正や改憲に対する賛成/反対の判断材料にもなると思います。
ハリトヒト。さんの今回の記事はベテランあはき師から若手あはき師、あはき師の卵、全てのあはきに関わる人たちが自らのアイデンティティを再考するいい問題提起だったのではないでしょうか。

こんな偉そうなことをつらつらと書いてしまいましたが、私は私で目の前の患者さんが少しでも楽になれるように日々向き合い、勉強と研鑽を重ねていく所存であることは言うまでもなく、自戒を込めてこのような記事を書かせて頂きました。

長々とお付き合い下さいまして誠にありがとうございました。
それではみなさん、ごきげんよう。

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